アガレスト戦記二次創作小説 前編
『戦巫女の想い人』(pixiv投稿分と同内容)
(第二世代・ラディウス×夜宵ルート前提話)




 わたくしの想い人は今日も戦いの中で
先陣を切って駆けて行きます。
 剣を握るその手は無骨で、余計な事は一切言わないお方だけれど
わたくしは彼の強さと優しさを知っています。

「わたくしの名前は夜宵と申します」

 初めて彼と会ったのは、わたくしの故郷。ヤマトの村です。
 代々引き継がれて来た山の神への贄としてわたくしは選ばれ
そこで命が終わる所なのでした。

「俺の名前はラディウスだ。夜宵。
山の神の居る場所まで案内を頼めるか?」

 わたくしが先導して山を登って行き、
その後ろをラディウス様と仲間の皆様――
エリス様やボーグナイン様、ゼルヴァ様。ウィンフィールド様。
ヴィ・ラ=ロア様。
 皆、わたくしを守る為に来てくれたのです。
 感動してしまって……天涯孤独だったわたくしには頼れる人が
居ませんでしたから
皆様のご厚意に心が温かくなったのを記憶しています。
嬉し涙で頬を濡らす所をラディウス様が
気遣ってくださいました。

 はたしてわたくしたちの前に現れたのは山の神とは
程遠い姿の化け物、大きな蛇の魔物でした。
ラディウス様は陣を展開し、蛇の魔物に戦いを挑むのでした。

「わたくしの治癒の力をお使いください!」

 陣の後方で支援を申し出るとラディウス様は
頷き、こちらに背中を向けて
魔物に切りかかって行きます。
 そのお姿はとてもかっこよくて、頼もしくて。
 思えばわたくしは、この時からラディウス様に
見惚れてしまっていました。

 知らずに頬を染めて、心を込めて治癒の魔法を唱えます。
 程なくして魔物は倒れヤマトの村と
わたくしの命は助かりました。
 そして彼の率いる少数精鋭の部隊にわたくしは
同行を志願したのでありました。
 心よく快諾してくれたラディウス様に感謝の言葉と述べ、
尽きぬ戦いの中に身を投じたのです。

 それから約一か月後、聖都フュリムダリルを
出発したわたくしたちは
都の近くでもっとも大きい往路、フリューナ街道へと
差し掛かりました。

「この辺で宿泊しよう」

 街道の脇には旅人が休めるコテージがありました。
屋根がある部屋で思い思いに身を休める仲間たち。
 その中にラディウス様のお姿は
なくわたくしは彼の姿を求めてコテージの裏庭に出ました。

 そこでは剣を手に持ち素振りを繰り返す
愛しいラディウス様の姿が。
 そうそう、ラディウス様ってとってもモテるんです。
 聖都フリュムダリルで仲間になった彼の幼馴染だと
言うグルグンド国元将軍ヴァレリア様。
 彼女は、ラディウス様への想いを隠す事なくぶっきら棒な
態度ながらも言葉の端々に
ラディウス様への愛を散りばめています。
 こう言うのを恋敵と言うのでしょうか。
 うかうかしてはいられません。
 そしてもう一人、ネオコロム(獣人種族)と人間のハーフである
妖艶なる美女シェルファニール様。
 彼女は飄々とした性格で、ラディウス様への
好意は人並み以上。実際にお二人で
とても親し気に話されているのをよく拝見します。
 その気さくな性格は羨ましい限りで、
彼女もまたわたくしにとっての好敵手なのです。
 ヴァレリア様も、シェルファニール様も、わたくしも
ラディウス様への好意は皆同じ。
 わたくしの心配は、尽きません。

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